ざしを しれる ばしょ

普段語られないざしの、一部

赤ちゃんの頃から、

俺は 便秘だった。

 

あれは確か2歳位の時かな

白と緑のスポイト状の入れ物に入った

透明の液状の薬を、

けろけろけろっぴのプラスチックコップに

いれた水に溶かして飲んでいた。

こんなにも鮮明に覚えている。

夜寝る前に、お母さんのところに

コップを持って行って 薬を垂らしてもらう。

そうしないと 便秘で大変だったから。

 

三日分の宿便との戦いなんて

日常茶飯事すぎて もう慣れつつある。

でも、腹が痛い。

1㎏分くらいのソレが腹の中にある、という

この感じがもう そもそも気持ち悪いし

実際に ずっしりとした重みを感じる。

当然ながらイライラするし、

なにか行動するのも億劫になってしまう。

 

いろんな薬を飲んでみたり、

水分をたくさんとってみたり、

朝 軽い運動(ストレッチ)をしてみたり、

色々してるけど 効果は今ひとつ。

マッサージをしてみても イマイチ。

うちにウォシュレットが無いから

夜中に便意をもよおしても 排泄できないのも

ちょっとした悩みだったりする。

でもこればかりは言っても仕方ないから

あと1年半は 我慢しようと思う。

 

老廃物が身体の中に溜まるから

肌も 汚くなるんだろうな、と。

生活改善及び便秘解消しない限り

綺麗な肌にはなれないのかなぁ。

すっぴんで出歩けるくらいになりたい。

 

「ここちゃんには、

会いたいな って思ったの」

 

彼女はいつもと変わらない口調で

淡々と 俺に告げた。

その言葉に莫大な意味が込められている、

なんて 到底 感じさせないような

そんな言い方だった。

 

文字と声だけでこんなに楽しいなら

会ったらどれだけ楽しいんだろう。

俺の大好きな黒髪ショートヘアに

優しく触れたら、

彼女は 一体どんな顔をするんだろう。

どんな声で 俺の名前を呼ぶんだろう。

その時の俺は

どんな表情で彼女を眺めているのだろう。

 

考えたら考えるほど

約束の日が楽しみで楽しみで

仕方なかったのを覚えている。

電話口で何度も「楽しみ!」という俺に

「分かったって(笑)」と 呆れたように

でも、どこか嬉しそうに笑った

彼女の声は 脳裏に媚りついている。

 

彼女の方から会う提案をされた時点で

俺は他のネ友とは 明らかに違う、と

電話の頻度・LINEの返信速度的にも

もう 他のネ友とはレベルが違う、と

実感する度に舞い上がった。

どんな形であれ、俺は 彼女の中で

“特別な存在”という位置付けを確立したのだ。

俺が彼女に出会う前から

彼女と友達だった 古株のネ友達をも

超越した存在になったのだ。

彼女が、俺を、そうしたのだ。

彼女の意志で。

 

その事実だけで俺は大満足だった。

本当に嬉しかった。

プライドの高い彼女が、

俺に弱音を吐いたり 相談してきたり。

その都度 嬉しさで気が狂いそうだった。

LINEが途切れないよう話題探しに奮闘した。

ずっと、ずっと、

彼女と話していたかったから。

もっと、もっと、

彼女と仲良くなりたかったから。

 

「俺もこんなに一生懸命になれるんだ」

と 自分で思うほどには

彼女のために 一生懸命生きていた。

でもそんな彼女には、

当時 俺に彼氏がいたことを言えずにいた。

「彼氏いんの?」と聞かれるのも怖くて

ずっとそういう話題を避けてきた。

口を開けば2次元の男の名前を零し、

相手の恋愛観や恋愛関係に関しても

なるべく触れないように生きていた。

隠そう、としてるつもりは無かったけど

今思い返せば 知られたくなかったんだよな。

ワンチャン、狙ってたのかな。

今でも当時の感情の整理が

あまり上手く出来ないんだよな。

まぁそれが全てを物語ってるんだけど。

 

でもいずれはバレるもので。

「映画見に行ったの〜 面白かったよ」

という会話の糸口を見つけた俺に

「誰と?彼氏と?」

と切り返してきた彼女。

彼女に嘘をつくのは心が痛むから

事実とは違う嘘は つきたくなくて

「…あー、うん」

と バカ正直に答えてしまった 過去の俺よ。

その後に彼女が言った

「やっぱり、ここちゃん彼氏いたんだ」

って言葉を聞いて モヤモヤした俺よ。

中々味わえない感情を経験出来て

よかったなぁ、と 笑えるくらいには

その選択が正しかったよ。

 

でも

 

「なーんだ そっか〜・・・

  そりゃ彼氏くらいいるか、ここちゃんだし」

と 言った あの彼女の声が

どこか悲しげに聞こえたことは

どう、心に落とせばよかったんだろう。

この性格じゃなかったら、

きっともっと苦しかったんだろう

と思うことがたくさんある。

 

胸ひとつとってもそう。

小学生の頃から人より胸が大きく、

中学に入った頃にはもう

ぱっと見て すぐ分かるくらいには

“巨乳”だった。

昔から たゆんたゆんに憧れてたので

それ自体は別によかった。

むしろ誇らしくすらあった。

女性らしい体つき、という魅力。

 

ただ、思春期男子が黙ってない。

「犯すぞ」

「乳揉むぞ」

「女バレのランニングの時乳揺れてたで」

「セクハラされても文句言えへんやん」

サッカー部・野球部・ハンドボール部の

クソ共にものすごくいじられた。

俺は強い子なので、何も気にせず

「は?喋んな死ね」

と返せていたが もし 内気だったら、と

考えるとちょっとゾッとする。

嫌な思いしたんだろうな、と思うと…

 

「あー 今の性悪女でよかった本当に」

心底、今の自分に感心する。

やっぱ俺は、

曲がるべくして根性がひん曲がっている。

もうこの性格じゃなきゃダメなんだ、

とすら思える。

 

昔付き合ってた彼氏にも

「やっぱ、おっぱいだなー」

と 言われたことがある。

もちろん本気では思ってないだろうし

軽い冗談のつもりで言ったんだろうけど

そういう発言は 大嫌いだ。

俺自身がそういう目で見られている

という事実は百歩譲って目をつむれるが、

“世の中の女の子達をも

そういう目で見て判断している”

と思ったら、吐き気がした。

 

男が女を品定め?するとき、

必ずといってもいいほど

性的な評価が加味されているのが

本当に気持ち悪い。

 

僕は プラトニックラブが すき。

 

人を睨まないの、

って先生に怒られた経験がある人。

 

いま「え?」って思った?

そりゃそうだよね。

ほとんどの人はそんな経験ないのよ。

友達と遊んでたらいきなり先生に呼ばれるの。

放課後の薄暗い校舎の陰に。

 

「さっき〇〇ちゃんのこと睨んだ?」

「〇〇ちゃんは怖い思いしたんだよ」

「謝ってね、ちゃんと」

「人を睨んだらダメだからね」

 

見ただけなんだよなぁ。

ちらっと、見ただけなの。

小学校2年生の頃から 何度それで怒られたか。

何度それで呼び出されたか。

 

二重や大きな一重の人間には分からない

“生きてるだけで人に不快感を与える”

この感覚よ。なによ、これ。

俺だって好きでこの目を選んだわけじゃない。

本当はまんまるで綺麗な二重がよかったよ。

大きくて、きゅるん とした目が。

 

人を見れば「睨んだ」と言われ

真顔でいれば「怖い」と言われ。

いやもう、冗談じゃないよ。

 

 

小学校も中学校もガッツリ運動部だったし

そもそも校則で化粧禁止だったから、

高校から変わってやろう  と思って。

そして、アイプチを始めた。

人生で初めてのアイプチ。

当時クラスで目立ってた綺麗な二重の女が

「実はアイプチやねーん!

  元々奥二重やねんけどな〜」と

既に与えられた勝ち組の印について

大声で話していたの、今でも覚えてる。

 

同じアイプチ利用者でも訳が違いすぎる。

元ある10を100にするのと、

0から1を生み出すのは 全く別。

ただでさえ勝ち組の人間が更に美しくなるのと

負け組の人間がようやく“並”になる、

この違いよ、わらっちゃう。

 

アイプチをしてからは

「目つきが悪い」と言われることは無くなった。

歳が歳、ってのもあるけど

「怖い」ってチクられることも

怒られることも 当然無くなった。

このノリ1本でこんなにも快適に、

普通レベルの生活が送れるのか と。

感動したよ、本当に。

 

でも、アイプチも決して安価なものでは無い。

それなりのものを使わなければ

肌の弱い俺はすぐかぶれたり痒くなったり

本当に大変なのだ。

それに時間がかかる。

重い一重だから尚更。

金も時間も費やして、

ようやく人並みになれる。

悔しいよね。

 

だから、そのうち

しようかなと思うんだよ。

 

 

なんで賛否両論あるのか

未だにわかんないんだけど(笑)

「親から貰った身体を、」とか

言うやつがいるんだよね。

なんでなんだろう。

親関係ないのにな〜

 

俺がいいって言ったらいいのよ。

俺の身体、俺の人生だし。

周りに何言われようが

知ったこっちゃないわ。

 

5万でお釣りが来るのよ?

保証だってあるのよ?

朝も、いつもより10分寝れるの。

メスは入れないから傷はつかないし

戻りたくなったらいつでも戻せるの。

 

こんなに素敵な話、他にないでしょ。

重い一重ブームが巻き起こらない限り。

 

いついかなるときも、

俺を甘やかす 激甘砂糖人間よ。

 

明日からダイエットする!と言えば

「今のままでも十分可愛いし

太ってるとは 思わないけど

ざしちゃんが痩せたいなら応援するよ」

と、嫌な顔ひとつせず運動や筋トレに

付き合ってくれる。

食事制限する!と言えば

毎週水曜日に作ってくれるご飯の

中華麺がこんにゃく麺に、

ハンバーグが豆腐ハンバーグに変わる。

甘い物食べたい…と呟けば

「どうする?食べちゃう?」

「なんか買いに行く?」と、

「ダイエットは?」など余計な事は一切言わず

優しく問いかけてくれる。

筋トレ疲れた暑い!と吐けば

「頑張ってて偉いね」「いっぱいえらいね」

と 報いの言葉をかけてくれる。

 

 

野菜が中心となったご飯も

「美味しい!全部 とっても美味しい!」

と 文句一つ言わずに食べてくれるし、

新しい服を着て見せたら決まって

「いいねぇ、何着ても可愛いね」

と 気持ちよく過ごさせてくれる。

それがお世辞だって構わない。

お世辞か否かは 重要じゃない。

咄嗟に口から出た言葉が

こんなにも温かいという、この事実だけで

俺は満足なのである。

 

俺がバイトの日には帰宅時間に合わせて

最寄り駅まで迎えに来てくれて、

買い物に行けば必ず荷物を持ってくれて、

月に一度 大好きなマカロンを買ってくれて、

飲み会に行ってもマメに連絡をくれて、

不安になることなんてない。

 

「浮気できる勇気も、

それを隠す器用さも持ち合わせていないから」

女絡みは心配ない、と思っていたが

ここ最近は 本当に 愛されていると実感する。

 

 

ああ、この人は俺の事が好きなんだ。

 

 

自惚れと言われればそれまでのように思えるが

実際にそうなのだから 自惚れではない。

 

楽しことだけを共有する時期など

遠の昔に終わったのだ。

お互いの家族のこともきちんと踏まえ、

同じ方向を じっと見つめるのよ。

「年収が低い男はちょっと、」と放った俺に

京都市役所を目指す」と返した貴方は

最高にかっこよかったし 

そのために努力をしているところも

最高に愛おしいぞ。

 

他人をこんなにも愛おしく思えるなんて、

他人のためにこんなにも尽くせるなんて、

他人にこんなにも好き続けて欲しいなんて、

こんな丸い女じゃなかったのよ 俺は。

公にすらしないだけで、

貴方を失った日々なんて考えられない程

貴方を心から大切に思っている。

でないと 両親には会わせない。

 

条件さえ合えば、

どんな男と結婚してもいいと思っていたのに。

金さえあれば、

生活はなんとかなると思っていたのに。

 

目に見える形で俺への好意を表してくれて、

おしゃれなカフェやレストランが好きで、

家事と自炊がちゃんと出来て、

身なりにも少しは気を使えて、

相手の気持ちを想いやれて、

俺の趣味を絶対に否定せず、

音楽に触れる生活を送れる人じゃないと

一緒に生きたくない、って思ってしまう。

 

金なら俺でも稼げる。

愛情も、笑顔も、極楽も金で買える。

 

でも、他人の温かさは買えない。

 

 

そう気づかせてくれた

俺の大事な大事な 可愛いわんこ。

あと一年本気で頑張って、

一年半後 俺と同じ家に家に住むんだろう?

今よりも広いキッチンがある家に。

 

貴方から貰ったとろけるような甘やかしを

2倍でも3倍でも 大きく膨らまして返すから

まだまだ俺に 飽きないでおくれよ。

 

 

 

 

 

女に生まれたからには、

月に一度 血を流す闘いがある。

 

酷く体調が悪い中、

普段通りを振る舞うことに体力を使い

身体を支配しようとする眠気と戦い

笑顔を二十重ねで貼り付ける。

俺の闘いはもう、かれこれ

11周年を迎えようとしている。

流石に戦法は分かりきっているため

向かい撃つ体制は万全だ。

 

何故、月に一度という

短すぎるスパンで闘わなくちゃいけないのだ。

と  今でも思ったりする。

慣れたけど、苦しさは変わりっこない。

 

 

頑張ろうね、おんなのこたち。

 

許す強さは、

本当に必要だと思う。

 

完璧主義な俺は常にアラがないように

完璧でいようと心がける。

時間は守るし報連相はしっかり、

先輩への媚び売りは怠らず

後輩への愛情も忘れず。

 

しかし、そんな俺も所詮は人間。

数え切れないほどの失敗をし

幾度となく人を傷つけた。

その都度“許してくれる人”に恵まれて

俺は今まで何不自由無く暮らせてきた。

 

にも関わらず。

 

俺は2度目の「ごめんね」にさえ

「いいよ」を返せない人間だった。

今思えば あれは些細なプライドと

ほんの少しの、いつもより張りすぎた意地。

大好きだったかつての親友とは

もう二度と元に戻れなくなってしまった。

“幼かった”と言ってしまえばそれまでだが

あの時の俺は、彼女に対して

確かな敵意を持ってしまっていた。

その敵意のせいで、

投げなくてもよかった言葉のナイフを

わざわざ投げたせいで、

彼女を傷つけてしまったの。

 

許さなくて正解だった、とも

俺だって傷ついたし、とも思うけど

でも心のどこかではいつも

「もし許してたら、何か変わったのかな」

って思っている。ずっと。

彼女と過ごした10年間は色を失い

忘れられていくだけのモノと化す。

1番失いたくなかった人は、

一瞬で俺の前から消えてしまった。

 

まあでも、今が楽しいから

結果はこれで良かったのだと思う。

高校で新しいコミュニティを作れたのも

その友人達と今も連絡を取り合うのも

全部、今の選択をしてきたおかげだから。

 

 

 

俺は今とても幸せだし

優しくて面白くて泣き虫なわんこと

生活する日々が楽しくて温かくてだいすき。

だから、この日々を失いたくないから

“許す強さ”を身につけた。

喧嘩しても相手を許す、

粗相をしても相手を許す、

間違えてしまっても相手を許す。

もちろんそれは

しっかり怒った上で、だけど。

目を瞑っていられる失敗は、全て許す。

根に持たない 意地を張らない 傷つけない。

ただそれだけを胸に生きている。

言い方が回りくどくても、

なかなか自分の意思で決められなくても、

たまに予定管理しっぱいしても、

お土産勝手に食べても、

そんなことくらいじゃ俺の目は開かない。

 

昔は彼氏より友達だろ、って本気で思ってた。

でも最近“1人”を失うという意味では

友達より彼氏を守りたい、と。

そう思ってしまう。

素敵な人に出会ったな  と思う。

友達上がりだから 尚更なんだけれども。

 

だから、このわんこにだけは

いつまでも目を瞑っていたいと

思うわけですね、自分のためにも。