ざしを しれる ばしょ

普段語られないざしの、一部

やっぱり僕は、

僕を慕ってくれる可愛い後輩が好きだ。

 

今日、8年ぶりくらいに会った

かつての後輩が愛おしすぎて

狂うかと思った、本当に。

例の如く彼女は2個下。

僕は2個下にめっぽう弱い。

そもそも彼女の場合は

後輩というか、家族のような存在。

 

出会いたての彼女のポジションは

同級生の友達の妹、という

なんとも絶妙かつ微妙な位置付け。

遠慮は無いが、気は使う。

結構喋るが、信頼は薄い。

そこから始まった僕達の友情。

初めの頃は 友人と妹と僕、3人でよく遊んだ。

そこから徐々に仲良くなって

友人を介さなくても平気で喋れるようになり、

2人だけの話をすることも増え、

どんどん波長が合っていくのを肌で感じた。

 

共働きの僕の両親の代わりに

友人の母はほぼ毎日お昼ご飯を用意してくれ、

長期休み中は特に家にお邪魔することが多く、

お泊まりも結構な頻度でしていた。

そのため、相手の家族は

本当の家族同様に接してくれた。

僕も僕で洗濯物を畳んだり

部屋を片したり、おつかいに行ったり

家族への貢献は欠かさなかった。

 

そんな、過去がある僕と彼女。

出会いたては「友人の妹」だった彼女と、

本日「気の合う友人」として出かけた。

そう、8年ぶりに。

 

僕がHIPHOP好きの大学生なら

きっと、迷わず「エモい」と零している。

二人の関係は変わっていないのに

彼女を表す表現だけが変わる、なんて

さぞかし「エモい」んだろうなぁ。

8年前、「新発売のお菓子食べた?」と

口を開いた彼女が

「結局生きるには金いるしな」

「多分女出来たからやけど、元彼にフラれた」

「5限ある日は帰ってくんの19時とかやしな」

と、僕の目を見て話すんだよ。

気づけば大学生になっていた彼女が

僕の目の前で、僕を見て、話すの。

まるで 最初から友達だったみたいな、

そんな感覚が押し寄せてきて

嬉しくて嬉しくてでもどこか寂しくて

力いっぱい抱きしめたくなった。

 

昔は「遊んであげなきゃ」

「一緒に連れてってあげなきゃ」

って、一生懸命お姉さんしてた部分が

多少なりともあったんだけど、

今日はそれが一切なかった。

気を使うことも、距離を感じることも。

 

でも一応歳上だから、食事代は出した。

そしたら、彼女

「えぇ、そんな、いいって…

払って貰えるなんて思わんかった

…いいの?ありがとう。

それならもっと安いの食べたらよかった…」

って言うんだよ。

ああ、僕の目の前にいるこの女性は

なんて愛らしいんだ。

このまま抱き潰して閉じ込めたい、と

何度も何度も思った。

可愛いは罪、とは良く言ったものだ。

 

そして、次に入ったカフェで

彼女は当たり前のように全額支払った。

「あ、レシート要らないです」

なんて、一丁前に言ってみせるの。

彼女は常識のある、気の利く、いい女。

自分もバイトしてるしちゃんとお金はある、

という彼女なりの意思表示だと思うと

本当に全てが愛おしくなった。

そんな彼女の意思を踏み躙る訳にはいかず

「ご馳走様、ありがとう」

と あっさり身を引くのもまた僕の良さ。

 

僕のインスタのストーリー見るなり

(久々に会うからおめかしちゃうわ、のやつ)

「え?これ 私の事?」

と聞いてくるので

「そうだよ、久々に会うからね」

と答えると

「は〜〜〜〜泣いていい?」

と、笑みを隠しきれずに訊ねてきた。

喜んでいるその顔が、可愛くて可愛くて

思わず大笑いしてしまった僕に

「泣いていい?って聞・い・て・ん・の!」

と ふざけてみせる彼女が

心の底から愛おしくて、失いたくなくて

ちょっとだけ 泣きそうになった。